2月3日(高カリウム血症で息子死にかける)

夫婦で面会。11時から治療方針に関する面談が控えていたが、その手前で少し息子と会えるようで、息子のベッドに通された。
いつも通りガウンを着て息子の顔を覗き込むと、ぼんやりした顔をしていた。「○○くん」と声をかけると目を大きく反応したので、眠かったのかなと思った。
そのタイミングで看護師さんが「ちょっとたんの吸引をしますねー」と少し慌てた口調でやってきた。
たんを引きながら「だいぶ引けました」と言うので、息子の背中をトントンしていると、面談時間になったB先生がゆったりとやってきた。
B先生は息子のモニターに目をやると「どうしてこうなってんの?」「血圧は?」と看護師さんに。「たんが落ちちゃったんですかね」と答えているうちに、徐々な不穏な雰囲気に。

夫曰く「一瞬心拍が70くらいになってるの見えた。表情は普通だからエラーだと思ったけど」と。普段心拍数は170ー150あたりなので、それは明らかにおかしいものだった。
B先生がC先生を呼びに行き、「徐脈してるみたい」と。
その場でバギング(風船のようなアイテムで人工呼吸)することになった。
先生同士が「カリの数値がさっき7だった」「今は9になってる」と話していた。
質問できる状況にないので、ただ黙って見守る。面会に通されて5分も立たずこういう状況になったと思う。

バギングすると、「ひとまず落ち着いてきました」と言われたものの、NICUの医師や看護師が集まってきて、切迫した雰囲気に。
ベッドから医師看護師が離れる隙があるため、合間を縫って背中を撫でたりしていたが、しばらくしてやはり両親は待合室にいるように声がかかった。

「なんで心拍が弱まったんだろう」と夫婦言い合いながら、一方で私は「今日逝ってしまうのかもしれないな」と思っていた。
なんにも予期しないまま、息子とベッド脇で最期アイコンタクトして、彼はぜんぜん苦しそうにもせずに瞬きして、そのうち逝ってしまうのであれば、それがむしろいいのではないか。と思い始めていた。

しばらく待つとB先生がやってきて「高カリウム血症です」と説明があった。
元々息子は利尿剤の影響でカリウムが不足していて、カリウムを内服していたが、昨日利尿剤の点滴が詰まってしまい、利尿剤を内服に切り替えたと。
すると尿量が減り、カリウムが排出できなくなり、血中のカリウム濃度が高くなってしまったと。
血中のカリウム濃度が高くなると、不整脈・徐脈と心臓の鼓動が弱まり致死的な状況になる。
「もう少し手前の段階で対応できなかったのか?という内部的な検討の余地はあると思うのですが、概ねこういう経過になります。」
「あと1−2時間が勝負というところで、おそらくうまくいくという想定ですが、ここがうまくいかないと、ECMOを回して治療するという手段しかなくなります。とはいえすでに○○くんはECMOを使用しているので、2度目は癒着していてリスクがある。ご両親がそういった治療を積極的にされるかはもちろんお伺いした上で・・・」というような説明があったのち、近くの待合室で待機することになった。
話を聞いた後は、「ご飯食べておいてください」と言われ、長い時間になりそうだったので、夫婦でカレーを食べた。2人あまり動揺していなかった。

その後面会できることになった。カリウムが5.5まで下がり、致死的な状況からは脱したということだった。
息子は目をぱっちり開けていた。心拍数が230と、強心剤を打たれた影響でめちゃくちゃバクバクしているようだったが、とても気持ちが悪い、という状態ではなさそうだった。
しかしその後、声が出ないながらもかなり泣いてしまっており、とてもかわいそうだった。
体位向きを変えるとようやく泣かなくなった。
現主治医のC先生が気まずそうに「利尿剤を内服に切り替えたことでこんな大事になってしまうことは経験がなかったが、甘く見てしまっていたかもしれません。すみません。」と言ってきた。
夫が空気を読んで「それだけ息子が複雑な状況にあって、先が読みづらいということですよね」というと

両親が怒っていないとみるやC先生から
「そうですね…。でも、○○くん強いです。脆いところはあるけどこうやって戻ってきてくれて、強いなって思います。」
と言われ、そのトンチンカンぶりに、夫婦ともどもげんなりしてしまった。
単純に、医師のカリウムの調整によって死にかけたとも言えるが、「戻ってきてくれて強い」と言われるのは明らかにおかしいと思ってしまった。